OWL MILSが掲げるこの言葉には、単なるサングラスブランドではない彼らの思想が表れています。
山を歩くこと。
景色を見ること。
自然の中で過ごすこと。
そして、街を歩くこと。
旅をすること。
日々を心地よく過ごすこと。
その体験は、私たちが思っている以上に「視覚」に大きく左右されています。
OWL MILSが目指しているのは、単に眩しさを防ぐためのサングラスではなく、自然の中でも日常の中でも、より良い視界を通じて体験そのものを豊かにすること。
今回はOWL MILSに、ブランド誕生の背景からモノづくりの考え方、そして「視覚こそ、体験である」という言葉に込められた想いについて伺いました。
NMG田中(以下、N):ブランドを始めようと思ったきっかけと、当時感じていた違和感について教えてください。
OWL MILS白川さん(以下、O):きっかけは、OWL MILSの前身となる運営会社の代表から、「鯖江の産業の復興を裏テーマに、サングラスブランドを立ち上げる新規事業を手伝ってほしい」と声をかけていただいたことでした。そこからブランドの立ち上げに中心的に関わり、ブランドの方向性やプロダクトづくりを主に担当するようになりました。
当時、自分自身も登山を楽しむ中で、サングラス選びに強い違和感を持っていました。眩しさを防ぐだけでは不十分で、長時間掛け続けられること、樹林帯や曇天でも自然に見えること、そして日常でも使いたくなるデザインであること。そういった自分自身の不満や実感を形にしていったことが、OWL MILSの原点です。
その後、2024年2月末に私自身が法人化し、OWL MILSの事業を引き継ぐ形で現在の体制になりました。資本提携などもなく、前運営会社とは完全に独立した形で、OWL MILSを主軸事業として展開しています。
N:ブランドを始めた頃から変わらず大切にしている価値観はありますか?
O:ブランドを始めた頃から変わらず大切にしているのは、「自分たちがやる意味があるかどうか」です。
他社がやらないことにも積極的に取り組みたいと思っていますが、それは単に目新しさを狙うという意味ではありません。
まだ多くの人が言語化できていない潜在的なニーズに対して、自分たちなりの答えを出すことを大切にしています。似たようなブランドや、似たような思想になってしまうのではなく、OWL MILSだからこそ提案できる価値は何か。その問いを持ち続けることが、ブランドの軸になっています。
N:良い道具とは何だと思いますか?
O:実際に使っている時にストレスが少なく、自然や行動の邪魔をしないこと。そして、その人の体験を自然に支えてくれること。そういった道具こそが、自分たちの考える良い道具です。
自分自身、登山やアクティビティをする中で、道具の存在を強く意識しなくても、結果的に体験そのものがより良くなっていると感じる瞬間があります。OWL MILSで言えば、美しい景色をより自然に楽しめることや、長い時間掛けていても視界や行動の妨げにならないことだと思います。
そういう意味で、主役はあくまで使う人の体験であり、道具はそこに静かに寄り添う存在であるべきだと思っています。
N:なぜ数あるアウトドアギアの中で、アイウェアという分野を選んだのでしょうか?
O:サングラスは、正直に言うと販売がとても難しいアイテムです。
必要性や違いが伝わりにくく、まだ多くの方にとっては「眩しさを防ぐもの」という認識に留まっている部分があると感じています。でも、だからこそ面白いとも思っています。
市場としてはまだ未成熟ですし、視界が体験を変えるという価値は、まだ十分に伝わっていません。登山でも、ランニングでも、日常でも、見え方が変わることで快適さや安心感、景色の楽しみ方まで変わります。小さなブランドだからこそ、その価値を丁寧に伝えていけるのではないか。そう思ったことが、アイウェアという分野に取り組んでいる大きな理由です。
印象的だったのは、ブランドの出発点が市場やトレンドではなく、自身が登山の中で感じていた違和感だったことです。眩しさを防ぐだけではなく、長時間快適に掛けられ、自然な景色を楽しめること。その実体験から生まれたモノづくりだからこそ、OWL MILSには道具としての説得力があるのだと感じます。
N:製品開発で最も大切にしていることは何ですか?
O:製品開発で最も大切にしているのは、ユーザー体験です。
このレンズで景色がどう見えるのか。このフレームは心地よく掛けられるのか。このデザインを身につけた時に気分が上がるのか。視界が快適で、掛け心地がよく、サングラス自体のデザインにも気分が高まる。その体験こそが、リピーターにつながっているのだと感じています。
N:自分たちらしさが最も表れている部分はどこだと思いますか?
O:やはり最大の特徴である「MILS LENS」だと思います。
偏光レンズ、ハイコントラストレンズ、高い透過率、そしてパープルグレーという独自のレンズカラー。この掛け合わせこそが、OWL MILSらしさを最も象徴している部分です。ただ眩しさを遮るだけではなく、自然な明るさを保ちながら、地形や路面、木々の陰影を見やすくする。アウトドアでも日常でも掛け続けられる視界をつくることを目指している点に、自分たちの考え方が表れていると思います。
N:フィールドでの体験が製品に反映された印象的なエピソードはありますか?
O:一番最初のモデルこそ違いますが、それ以降はレンズカラーを全てパープルグレーで統一した点です。
山で見る景色、日常の街並み、運転中の風景。それらの見え方がレンズカラーに左右されていると気づいた瞬間、景色の色が変わってしまうことに強い違和感を覚えました。
「いや、本来見たかった景色ってこれじゃない」と思ってしまったんです。
そこから、色を変えすぎるレンズがどうしても無理になりました。笑
N:「これは自分たちらしい製品になった」と思うモデルがあれば教えてください。
O:やはり、ベストセラーの Sif だと思います。ベストセラーといっても、発売してまだ3年ほどですが。笑
Sifを出した当時、登山やアウトドア向けのサングラスで、ブリッジにメタルを使ったクラシックなコンビネーションフレームは、ほとんどありませんでした。機能性を突き詰めるとスポーツサングラスらしい樹脂フレームになりやすいですし、逆にコンビネーションフレームはどうしても街用やファッション寄りの印象が強かったと思います。でも実際にSifを使っていく中で、コンビネーションフレームでもフィールドで十分に使えるという手応えがありました。そこからRED LABELのKushinadaの開発にもつながっています。今では、アクティビティ向けのサングラスにコンビネーションフレームを取り入れているブランドとして、少しずつ認知していただけるようになってきたのかなと、多少なりとも自負しています。
※コンビネーションフレーム:金属と樹脂など、異なる素材を組み合わせて作られるフレームの総称です。
N:アウトドアで使うサングラスにおいて、特に重要だと考えていることは何ですか?
O:長時間使っていて、不快にならないことが大前提ではないでしょうか。まぶしさを抑えること、見え方が自然であること、そして長時間掛けてもストレスが少ないことです。
アウトドアでは光の環境が常に変わります。直射日光、木陰、水面の反射、雪面、岩場、曇天。そういった変化の中で、常に安心して使えることが大切です。また、フィット感も非常に重要です。ズレる、痛い、重い、視界が歪むといった小さなストレスがあると、自然に集中できなくなります。アウトドア用のサングラスは、見え方と掛け心地の両方が揃って初めて機能すると考えています。
N:レンズ選びでユーザーが誤解しやすいことはありますか?
O:よくある誤解は、濃いレンズや調光レンズであれば高性能だと思われやすいことです。
もちろん、まぶしさを抑えるうえで有効な場面もありますが、暗くなりすぎると視界の情報量が減ったり、景色の色が沈んで見えることがあります。また、偏光レンズもすべて同じではありません。レンズカラーや透過率、コントラストの設計によって、見え方は大きく変わります。OWL MILSでは、ただ暗くするのではなく、必要な光を残しながら不要な反射を抑えること。そして、景色の色や明るさをできるだけ自然に保つことを大切にしています。
単に眩しさを抑えるのではなく、「景色をどう見せるか」まで設計していることが印象的でした。特に、景色本来の色を損なわないためにレンズカラーを統一したという話からは、OWL MILSらしいこだわりを感じます。サングラスを光を遮る道具としてではなく、視界を整えるためのギアとして捉えていることが、モノづくりの細部に表れています。
N:普段はどのようなフィールドで遊び、製品をテストしていますか?
O:基本的には、みなさんとほとんど同じ環境で使っていると思います。登山やライドはもちろんですが、OWL MILSは日常でも機能することを大切にしているので、普段からほぼ毎日掛けています。雨の日や曇天でも、日中であれば基本的に使っていますし、コンビニに入る程度であれば外さないことがほとんどです。これから暑い夏になりますが、毎年あえて車内に置いた状態での確認も行っています。日本は高温多湿で、フレームやレンズにとってはそれだけでも十分に過酷な環境です。笑
そうした日常の中で使い続けることで、フィールドだけでは見えない耐久性や使い心地も確認しています。
N:最近印象に残ったフィールド体験や旅などがあれば教えてください。
O:地元福井の百名山、荒島岳ですかね。スタートは晴れていたのですが、段々ガスってきてしまいました。ただ、OWL MILSのサングラスをいちいち外すことなく山行を続けられました。晴れていても、ガスっていても視認性が確保できるレンズとして、MILS LENSは非常に良いなと改めて感じました。
N:自社製品をひとつだけ持って出かけるならどのモデルを選びますか?
O:RED LABELのTsukuyomiですね。
OWL MILSの全モデルの中で一番レンズ面積が大きいので、とにかく視野が広いです。景色を楽しむという意味では、これ以上に適したモデルはないのではないでしょうか。笑
スクエアでもラウンドでもない、絶妙な玉型も気に入っています。どうしても視界の広さに慣れてしまうと、他にはいきにくくなってしまいます。デザイン的にはTakehayaが一番好きなんですけどね。笑
N:サングラスによって体験が大きく変わると感じる場面はありますか?
O:特に晴れた日の登山、ライド、そして運転中に見る景色ですね。手前味噌ですが、MILS LENS越しだと全てが美しく見えます。せっかく良いレンズなんだからという意識が働くからか、より景色を楽しむようになりました。ブランドを始めて4年ですが、いまだにMILS LENS越しに見る景色は美しいと感じますし、それらが自分にとって最高の体験です。
N:製品を通じてユーザーに伝えたいことはありますか?
O:今年から新しく制定したタグラインがあります。
Vision is experience.
視覚こそ体験である。
これが一番伝えたいことです。
サングラスは、眩しさを遮るだけの道具ではなく、視覚そのものを体験へと意識させてくれる道具だと考えています。視覚による情報量は五感の中でも一番です。普段意識しない視覚だからこそ、体験としてもっと意識すれば、日常からより楽しくなるのではないかと考えています。
N:どのようなシーンで製品を使ってもらえたら嬉しいですか?
O:難しいかもしれませんが、夜間以外の外では常に掛けていただけると嬉しいです。晴れた日は当然なのですが、曇りの日も雨の日も、「なんか見やすいぞ」と思っていただける一瞬があると思います。そこを感じていただければ、もっとOWL MILSを好きになっていただけるかもしれません。
N:サングラスを使っていない人に、まず伝えたいことはありますか?
O:道具を通して、意識や体験が変わったと感じる経験をしたことがあるなら、それと同じようなことがサングラスでも起きるかもしれません。今まで意識したことがないなら、なおさらです。なので、信じて一度、どこのサングラスでもいいので掛けてみてください。笑
「Vision is experience.(視覚こそ体験である)」という言葉は、今回のインタビューを通して何度も感じたテーマでした。サングラスを掛けること自体が目的ではなく、景色や旅、日常をより豊かに楽しむための道具として捉えていることが伝わってきます。サングラスをまだ使っていない人にとっても、視界の変化は新しい体験の入口になるはずです。
N:初めて手に取る一品として薦めるなら、どの製品を選びますか?
O:「これがおすすめです」と一つに絞るよりも、まずはサイズがきちんと合うこと。そして、一番気に入ったデザインを選んでいただくことが大切だと思っています。サングラスは機能性だけでなく、身につけたときの気分や、その人らしさにも関わるものです。だからこそ、実際に掛けたときに自然で、気分が上がる一本を選んでいただくのが一番だと考えています。
OWL MILSに惹かれた理由は、サングラスを単なるファッションアイテムや紫外線対策としてではなく、「体験を変える道具」として考えているところです。登山やランニング、旅や日常の中で、私たちは常に何かを見ています。景色、路面、光、空気感。その見え方が変わるだけで、行動の快適さや、その日の印象まで変わる。OWL MILSの話を聞いて、改めてそのことを感じました。
実際に使っていて印象的なのは、山だけでなく普段の自転車移動でも自然と掛ける機会が増えたことです。視界が暗くなりすぎず、景色の色も大きく変わらない。けれど、眩しさや反射は自然に抑えられている。山でも街でもそのまま使える感覚があり、白川さんの言う「使う人の意識から自然に消えていく道具」という言葉にも、とても納得しました。
Nicetimeでは、フィールドで機能することと、日常でも自然に使いたくなることの両方を大切にしています。OWL MILSは、その感覚にとても近いブランドです。アウトドア専用として構えすぎず、けれど道具としての理由がしっかりある。サングラスを「視界を整えるギア」として提案している点に、私たちは強く共感しています。
まだサングラスを道具として使ったことがない人にこそ、OWL MILSを試してほしいと思います。晴れた日の山やランニングはもちろん、曇りの日、旅先、街を歩く時間にも、見え方が少し変わるだけで体験は変わります。特別な場面だけでなく、日常の延長にあるアウトドアを楽しむ人にとって、OWL MILSは自然に手が伸びる一本になるはずです。
自然の中でも、旅先でも、日常でも。
OWL MILSは視界を整えることで、体験そのものを豊かにしてくれます。
「視覚こそ、体験である。」をコンセプトに掲げる日本発のアイウェアブランド。独自開発のMILS LENSを中心に、アウトドアから日常まで自然な見え方と快適な掛け心地を追求しています。サングラスを単なる紫外線対策ではなく、景色や体験を豊かにするためのギアとして提案しています。
Text: Koichi Tanaka / NMG