前回は、OWL MILSがどのような違和感から生まれたのか、そして「視覚こそ、体験である」という思想の背景について伺いました。
第2回では、その思想がどのように製品へ落とし込まれているのかを掘り下げます。自然な明るさを保ち、景色本来の色を大きく変えず、アウトドアでも日常でも掛け続けられる視界。そのモノづくりには、単に眩しさを防ぐだけではない考え方がありました。
N:製品開発で最も大切にしていることは何ですか?
O:製品開発で最も大切にしているのは、ユーザー体験です。
このレンズで景色がどう見えるのか。このフレームは心地よく掛けられるのか。このデザインを身につけた時に気分が上がるのか。視界が快適で、掛け心地がよく、サングラス自体のデザインにも気分が高まる。その体験こそが、リピーターにつながっているのだと感じています。
N:自分たちらしさが最も表れている部分はどこだと思いますか?
O:やはり最大の特徴である「MILS LENS」だと思います。
偏光レンズ、ハイコントラストレンズ、高い透過率、そしてパープルグレーという独自のレンズカラー。この掛け合わせこそが、OWL MILSらしさを最も象徴している部分です。ただ眩しさを遮るだけではなく、自然な明るさを保ちながら、地形や路面、木々の陰影を見やすくする。アウトドアでも日常でも掛け続けられる視界をつくることを目指している点に、自分たちの考え方が表れていると思います。
N:フィールドでの体験が製品に反映された印象的なエピソードはありますか?
O:一番最初のモデルこそ違いますが、それ以降はレンズカラーを全てパープルグレーで統一した点です。
山で見る景色、日常の街並み、運転中の風景。それらの見え方がレンズカラーに左右されていると気づいた瞬間、景色の色が変わってしまうことに強い違和感を覚えました。
「いや、本来見たかった景色ってこれじゃない」と思ってしまったんです。
そこから、色を変えすぎるレンズがどうしても無理になりました。笑
N:「これは自分たちらしい製品になった」と思うモデルがあれば教えてください。
O:やはり、ベストセラーの Sif だと思います。ベストセラーといっても、発売してまだ3年ほどですが。笑
Sifを出した当時、登山やアウトドア向けのサングラスで、ブリッジにメタルを使ったクラシックなコンビネーションフレームは、ほとんどありませんでした。機能性を突き詰めるとスポーツサングラスらしい樹脂フレームになりやすいですし、逆にコンビネーションフレームはどうしても街用やファッション寄りの印象が強かったと思います。でも実際にSifを使っていく中で、コンビネーションフレームでもフィールドで十分に使えるという手応えがありました。そこからRED LABELのKushinadaの開発にもつながっています。
※コンビネーションフレーム:金属と樹脂など、異なる素材を組み合わせて作られるフレームの総称です。
N:アウトドアで使うサングラスにおいて、特に重要だと考えていることは何ですか?
O:長時間使っていて、不快にならないことが大前提ではないでしょうか。まぶしさを抑えること、見え方が自然であること、そして長時間掛けてもストレスが少ないことです。
アウトドアでは光の環境が常に変わります。直射日光、木陰、水面の反射、雪面、岩場、曇天。そういった変化の中で、常に安心して使えることが大切です。また、フィット感も非常に重要です。ズレる、痛い、重い、視界が歪むといった小さなストレスがあると、自然に集中できなくなります。アウトドア用のサングラスは、見え方と掛け心地の両方が揃って初めて機能すると考えています。
N:レンズ選びでユーザーが誤解しやすいことはありますか?
O:よくある誤解は、濃いレンズや調光レンズであれば高性能だと思われやすいことです。
もちろん、まぶしさを抑えるうえで有効な場面もありますが、暗くなりすぎると視界の情報量が減ったり、景色の色が沈んで見えることがあります。また、偏光レンズもすべて同じではありません。レンズカラーや透過率、コントラストの設計によって、見え方は大きく変わります。OWL MILSでは、ただ暗くするのではなく、必要な光を残しながら不要な反射を抑えること。そして、景色の色や明るさをできるだけ自然に保つことを大切にしています。
単に眩しさを抑えるのではなく、「景色をどう見せるか」まで設計していることが印象的でした。特に、景色本来の色を損なわないためにレンズカラーを統一したという話からは、OWL MILSらしいこだわりを感じます。サングラスを光を遮る道具としてではなく、視界を整えるためのギアとして捉えていることが、モノづくりの細部に表れています。



どれだけ優れたレンズでも、その価値はフィールドや日常で使われてこそ。次回は、実際の山や街の中でOWL MILSがどのように使われているのかを伺います。
Text: Koichi Tanaka / NMG